a the の使い分けを完全解説!初心者でもすぐわかる冠詞の使い方

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「『a』と『the』の違いや使い分け方がわかりません」

ほぼすべての生徒さんがこう言います。

ですよね、私もそうでした。

「a」や「the」は品詞で言うと「冠詞」です。(細かく言うと「不定冠詞」「定冠詞」ですが、そこまで気にしなくていいです)

英語学習におけるこの冠詞は、日本人にとって習得が難しい文法の一つです。

「桃栗三年柿八年」(何事も成就するには時間がかかる、という意味のたとえ)という言葉がありますが

英語学習界には、誰が言い出したのか
「前置詞3年、冠詞8年」という言葉があるくらい、冠詞の完全な理解には時間がかかるもの。

実は英語初心者にとっては「a」や「the」のような冠詞を完璧にマスターする必要はありません。

冠詞一つ間違えたからと言って、言いたいことが全然伝わらない、という事態はほぼ起きないからです。

とはいえ、一切無視していいというものでもありません。

大切なことは、基本になるイメージをつかんでおいて、徐々になじんでいくこと。

少しずつ理解を広げて、経験を重ねるうちに、いつの間にかおおよそわかるようになります。その繰り返しで正しい使い方は自然と身についていくもの。

大事なのは、

中学で習う程度の、基本的な冠詞のイメージをつかんでおくこと

基本的な冠詞のイメージがつかめていれば、冠詞が気になって話ができない、とか、冠詞のニュアンスが全く理解できない、ということはなくなります。

今回はその基本の「a」と「the」のイメージをつかみやすいように、
解説のためのイラストをたくさん準備しました!

最後には、理解できたか確認のための練習問題と解説もご用意しました。


イラストを見ながら、「a」と「the」の基本の感覚がイメージできるようにしていきましょう!
そして、練習問題で正解して冠詞に自信がつくようにしてきましょう!

目次

「a」「the」の使い方をわかりやすく解説

「a」と「the」冠詞とは

「a」と「the」は英語の中で使われる冠詞の代表的な例です。
冠詞は名詞の前に置かれる単語で、名詞を修飾したり特定したりする役割を果たします。

はぁ?

・・といわれても、ピンときませんよね。
この説明は、正しいし簡潔なんですが、
英語初心者にとっては文法用語満載で、いまいちわかった気になれません。

なので、できるだけかみくだいてイメージしやすいように説明していきますね。

冠詞は 詞(言葉)の冠(かんむり)だ

「a」と「the」は英語の中で使われる代表的な冠詞

って、王様とかが頭にかぶってるあれですよね。

王様が王冠をかぶってるとパッと見て王様だ!ってわかりますね。

日本でも、西暦603年に聖徳太子によって冠位十二階の制が定められ、冠の色によって階級を示すようになったんだそうですよ。

冠って、頭にのせるちょっとした目印。

冠詞は、言葉の頭につくちょっとした目印なんです。

「冠詞の直後は名詞」

冠詞は言葉の冠、ちょっとした目印のマークがついているようなもの、
ということまではわかりましたよね。

では、「a」と「the」は、なんのマーク(冠)なんでしょう?

a」は、基本的には「ひとつの」という意味の冠(目印)です
the」の基本の意味は「その」「あの」「例の」という意味の冠(目印)。

そして、その冠の直後には名詞が来ます。

この「冠詞の直後は名詞です」というと、その瞬間にすごーく嫌そうな顔をする生徒さんがちょいちょいいます(笑)

「冠詞の直後は名詞」なんだか暗記しなければいけないルールのように聞こえますが、
実は全然そんなことはなくて、簡単なことなんです。

考えてみてください。

「ひとつの・・」につづく言葉、何が来そうですか?
「ひとつの」「ひとつの言葉」「ひとつの花瓶」・・・・

「石」「言葉」「花瓶」・・・。「ひとつの」に続く言葉は、すべて「名詞」ですよね。
この部分の語順は英語も同じ。

「冠詞の直後は名詞です」冠詞は名詞の前につくもので、動詞や形容詞の前にはつきません
「空欄の前に冠詞があるので、空欄の中は名詞です」
文法問題の解説にそんな風に書いてあって、それだけで脳がフリーズした経験がある人も多いはず。

「冠詞は名詞の前にしか付きません」は、日本語に置き換えて考えてみてもすんなりなじめることなんです。

「その」も「あの」も「例の」も同じです、後ろにくる言葉はすべて「名詞」。

「冠詞は名詞にしか付きません」というのは
「その」だの「例の」だの「一つの」だのの後ろに続くのは名詞だけだよね
と言っているだけ

そして「その」「あの」「例の」の場合には、話を聞いている側も「あぁ、あれのことね」とわかっている、という前提がありますよね。

「その」「あの」「例の」という意味を伝えるのが冠詞、
冠詞は冠詞の後ろにある名詞が指している人や物が、

・これから新しく話題に出てくるものなのか
・すでにお互い知ってて特定できるものなのか
・一つなのか、そうじゃないのか

を簡単にしめす目印・記号のようなものです。

「a」の意味 「a」は「ひとつ」のマークだった

「a」の意味を知る前に、必ず意識しておきたいことがあります。

英語は、名詞が数えられるときは必ず「一つなのか」それとも「複数なのか」を、伝えるというクセがある言葉、ここが日本語にはあまりない感覚で、「冠詞」の理解を難しくしている原因の一つです。

日本語では「一つあります」というときは「ひとつ」とわざわざつける意味があります。
「一つだけしかありません」だったり「一つ残ってますよ、よかったですね」だったり。

日本語で「ひとつ」というときには、その「ひとつ」に意味があります。
この感覚を英語にしたときには、「a」ではなく「one」

でも、英語では「ひとつ」に特に意味がなくても、「ひとつ」を伝えます。

英語は、数えられるなら
特に意味がない場合でも「一つ」を言う
言葉

を意識して覚えておきましょう。

「a」の意味

「a」は
「ひとつです、複数ではありません」
ということを表す目印になる記号(冠)のような役割

これをイメージとしえ心にしみこませるために、「a」のルーツをたどってみましょう。

オックスフォード・ラーナーズ・ディクショナリーズオ(英英辞書)の「a」のページを見ると
一番下のところにWord Origin(言葉の起源)がかいてあります。
そこには

Middle English: weak form of Old English ān ‘one’.
(中英語時代の a/an は、古英語の ān(oneの弱形である)

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/a_1?q=a

とありました。

冠詞の「a」は、大昔にはoneだった!

oneという意味のānがしだいに省略されて、いまの冠詞の「a」になったそうです。

「1」とはっきり言いたいときはoneとちゃんと言うけれど、
別に「1」ということがさほど重要ではないときは、強く言う必要もないから省略されてきた
それが冠詞の「a」

“1つ”という意味合いが希薄になるにつれ、発音も次第に弱くなり、ついには冠詞”a/an”という形になったわけです。不必要な発音を省略することで、冠詞”a/an”が生まれたんですね。

それを思えば、自然と「a」の意味も見えてきますね。

「1」の意味はさほど重要じゃないけど、とりあえず、数は1

これくらいの認識が、冠詞の「a」にはちょうどよさそうです。

ケンブリッジ辞書のページで、「a」を調べて冠詞の項を見ると

used before a noun to refer to a single thing or person that has not been mentioned before, especially when you are not referring to a particular thing or person:
(名詞の前に使用することで、特に特定の事物や人物を指していない場合に、それまでに言及されていない単一の事物や人物を指す

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/a

と書いてあります。

例えば、「a book(本)」は本が1であって、複数冊ではないよ、と言っているだけ。
特別な、特定のものじゃないよ、ただ一つだよ、というマークがついているようなもの。
本が「1冊です」って冠をつけてるんです。
でもその「1」という数にさほど重要性はありません。
数は重要じゃないから、とりあえず1ですよ、というマーク(冠)をつけてるだけ。
※「特定のもの」についての説明はこちら

別にとりたてて「」と言うほどでもないけど、「一応1です」を表すマーク(冠)が「a」

「a」どんな時につく?

冠詞の「a」がつくのは

数えることができる名詞の数がひとつであって、
その名詞は特に特定なものではない場合
です。

  1. 数えることができる名詞 = 可算名詞
  2. その数が1つ = 単数
  3. 特に特定なものではない = 不特定 ※「特定のもの」についての説明はこちら

このように、3つの条件が揃った場合に”a”が使われるんですね。

“a book” なら、

  • 名詞”book”は可算名詞(数えられる)
  • 1冊の本
  • 特に特定の本ではない

この3条件がそろったときに、”a book” と言います。

「a」が使われる時まとめ

数えられる名詞が「ひとつ」(単数)の場合 (a book, a pen, a car)

その名詞が「特定のもの」ではない場合 (I need a pencil. どの鉛筆でもいいけど1本)
※「特定のもの」についての説明はこちら

「a」をつけないのはどんな時?

とはいえ、いつでも「a」がつく、というわけではないですよね。
なので「a」がつかないケースもおさえておきましょう。

「a」がつかないのは主に以下の四つのパターンの時。

  1. 複数形の名詞の前(一つじゃないのでつきません かわりにsが付きます)
    • books, pens, cars
  2. 不可算名詞の前(数えられないときはつきません)
    • 概念 (happiness, freedom, advice, etc.)
    • 決まった形のない物質の名前 (gold, iron, water, air, etc.)
  3. 固有名詞の前(数えるものじゃないのでつきません)
    • 人名
    • 地名
    • 団体名など
  4. 特定の何か(特定のものにはつきません)※「特定のもの」についての説明はこちら

しっかりとした形が決まっているかどうか、という点がポイント。

「an」 は言いやすいかどうかだった

「a と anの違いはなんですか?」という質問を受けることもよくあります。

意味の違いはぜんぜんありません。

  • 母音(a, e, i, o, u)で始まる単語の前には”an”を使う
  • 子音で始まる単語の前には”a”を使う

と中学校では習います。

例:

  • “a cat”(子音で始まる), “a book”(子音で始まる)
  • “an apple”(母音で始まる), “an umbrella”(母音で始まる)

ルール、というよりは、ただ発音しやすくするための慣習に近い部分がありそうで
実際のネイティブスピーカーの発音を聞くと、必ずしもいつもそのルールに従っているわけでもなさそうだったりします。

つまり、実際に声に出してみるとわかりますが「ア・アップル」というより「アン・アップル」のほうが言いやすい、「ア・エアプレイン」とかとても言いにくいけど「アン・エアプレイン」だと言いやすい

百科事典なのでおなじみのブリタニカシリーズの会社Merriam-Webster、英語の辞書なども出していて、HPのなかでは英文法や発音に関するコラムなどを提供してくれています。
その中の「aですか?anですか?」、のページにはこのように解説されていました。

It’s About the Sound

The deciding factor for which of these words should be used is the sound that begins the word which follows these indefinite articles, rather than the letter which does. And there are scads of words in English that begin with a vowel, but which are initially voiced with a consonant sound (and vice versa).
それは音の問題なのです
どちらの単語を使うべきかの決め手となるのは、不定冠詞の後に続く単語がどのような文字で始まるかではなく、どのような音で始まるか。英語には、母音で始まるが、最初は子音で有声化される単語がたくさんある(その逆もある)。

https://www.merriam-webster.com/grammar/is-it-a-or-an

One, useless, unicorn 
どの単語もスペルの最初の文字は母音なのですが、発音はoneは W、 ほかの二つはYの音で始まります。

つまり、スペルだけを見て(a, e, i, o, u)で始まる単語はすべて「an」というわけではないんですね。
母音の「音」で始まる単語で、冠詞をaじゃなくてanにしたほうが言いやすい単語には「an」

なので、人によったり地域によって、aのままで言ったりanで言ったり、まちまちという事態も発生します。
たとえば、、”a historical event”と”an historical event”のように、”historical”のような単語は、最初の”h”の音が弱くなってiに近い音で言う人は、”an”を選ぶけど、強く”h”を発音する人は”a”を選ぶ、ということもあります。

そもそも「a」の語源が古英語の ānで、
昔は全部ānと言っていたけど、だんだん弱くなってaになった、
でも弱くしすぎると言いにくいものだけはanで残ってる、ということを考えると、ルールよりも言いやすさが優先されるのは納得ですね。

Middle English: weak form of Old English ān ‘one’.
(中英語時代の a/an は、古英語の ān(oneの弱形である)

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/a_1?q=a

「a」のイメージをつかむ例文

「a」は「数は一つ」を表すマークのようなもの。
英語は数えられるものの時はとりあえず一つですよ、をお知らせする習慣がある言葉なので、
一つであることに意味があろうとなかろうと、とりあえず「1ですよ」というマーク(a)だけはついています。
日本語では必要なければ「1」をつけないことも多いですよね。
特に1という数に意味がなければ訳してみると、「1」という数字が消えることも多いです。

訳の中に1という数字が入っていなくても、「a」がついていれば、その数は1。

それを意識しながら、例文を読んで「a」の感覚になじんでください。

  1. He ate an orange.
    (彼はオレンジを一個食べました。)
  2. There is a cat on the bed.
    (ベッドの上に猫が一匹います。)
  3. We saw a bird in the tree.
    (私たちは木に鳥が1羽とまっているのを見ました。)
  4. He is a student.
    (彼は生徒です。) 
  5. We played with a ball.
    (私たちはボールで遊びました。)
  6. Take a pen and write down your name.
    (ペンを取って、あなたの名前を書いてください。)
  7. Get a glass and pour me some water.
    (グラスを取ってきて、私に水を注いでください。)
  8. Hand me a piece of paper, please.
    (紙を1枚とってくれませんか。)
  9. Draw a picture of your favorite animal.
    (あなたの好きな動物を1匹、絵に描いてください。)

不可算名詞 「それ、数えられませんよ」

数えられない名詞(不可算名詞)とは

「a」は「ひとつの」ですが
そもそも「ひとつ」「ふたつ」と数えられない名詞があります。
数えられない名詞のことを、文法用語では「不可算名詞」というのですが、
この「数えられない」の感覚が日本語と少し違うところも、冠詞を難しいものと感じてしまう原因のひとつになってしまっています。

なので「数えられない名詞」(不可算名詞)についての、基本をおさえておきましょう。

不可算名詞の種類

「数えられない名詞」(不可算名詞)の主な種類をみてみましょう。
「数えられない名詞」の概念は奥が深いので、まずは中学校で習う基本をおさえるのが先ですね。

1.そもそも「モノ」ではないものは数えられません(抽象的な概念
  • love(愛)
  • happiness(幸福)
  • courage(勇気)
  • knowledge(知識)
2.モノであっても、決まった形がないものは、そのままでは数えません
  • water(水)
  • air(空気)
  • rice(米)
  • sugar(砂糖)
3.固有名詞は数えません
  • Japan, Tokyoなどの地名
  • spaghetti(スパゲッティ)など料理名
  • mathematics(数学)など学問名
  • baseball(野球)などのスポーツの名前


もともとは数えられる名詞でも、形が変わってしまえば数えられない、ということだってあります。

しっかりした決まった形のにんじんの時は数えるけど、にんじんであっても、にんじんらしい形状でなくなってしまえば数えない。

このように、「にんじんは数える」と覚えるより、「決まった形がある」ということがとても大切。

数えられない名詞だけど数えたいんだ!

a cup of waterのように、決まった形はないけど、数えたいものって他にもたくさんありますよね。
そんな時は、やはり単位を表す言葉(cup、bottle、piece、sliceなど)を置き、”of”をつけて数えます。

  1. a cup of:液体をカップの数で数える
    • a cup of water(水の一杯)
    • a cup of coffee(コーヒーの一杯)
    • a cup of tea(紅茶の一杯)
  2. a bottle of:液体をボトルの数で数える
    • a bottle of milk(牛乳の一本)
    • a bottle of juice(ジュースの一本)
    • a bottle of wine(ワインの一本)
  3. a loaf of:切る前のひとかたまりのパンを一個として数える
    • a loaf of bread(パンの一斤)
  4. a piece of:比較的小さめに切られたものを一切れ二切れと数える
    • a piece of cheese(チーズの一切れ)
    • a piece of cake(ケーキの一切れ)
  5. a slice of:スライスされたものを一切れ二切れと数える
    • a slice of pizza(ピザの一切れ)
    • a slice of bread(パンの一切れ)
  6. a sheet of:薄く平べったいものを、一枚二枚と数える
    • a sheet of paper(紙一枚)

紙だから必ずsheetで数える!ケーキだからpiece!と決まっているわけではありません。
同じモノでも状況で最適な表現が変わってきます。

カーテンに使用するための大きな布ならa sheet ofだし、パッチワーク用ならa piece ofになったり、
a piece of cakeというには薄っぺらすぎるケーキなら、a slice ofをつかうこともあるでしょう。
A4用紙一枚ならa sheet ofですが、小さくちぎった紙ならa piece ofで数えるでしょう。

基本的には:

  • Sheet – 大きめの平らな物
  • Piece – 比較的小さな塊
  • Slice – 薄く切られた一部分
  • Chunk – かたまりになった一塊

ものによって数え方が決まっているわけではなく、感覚に近いもの
薄いヒラヒラものなら1枚2枚
指でつまめそうなものは一粒二粒
薄くて小さく切られたものは一切れ二切れ
・・日本語も感覚で数え方が違います
同じように英語も、形や大きさのイメージで数え方がかわる、と思ってくださいね

何を数えて何を数えないかも、地域や文化によって微妙に違うこともあります。
たとえば、葡萄。
アメリカは一粒のブドウが a grape、ひと房のブドウは、a bunch of grapesと決まってますが、
イギリスは一粒のブドウが a grape、ひと房のブドウも同じa grape、a bunch of grapesというときもある、みたいな感じらしいです。

絶対に言い間違えてはいけない、間違えたら通じない、というものでもありませんので、だんだんなじんでいけばいい、それくらいの気持ちで慣れていくといいですね。

ここだけは基本なので必須

【中学校で習う不可算名詞の範囲】

・形が定まらないもの (waterとか)
抽象的概念 (loveとか)
集合的にとらえたときの言葉 (furnitureとか)
・固有名詞 (Tokyoとか)

なぜお金(money)は数えられない名詞なのか


不可算の基本概念は分かったものの、初心者が
「なぜこれが数えられないの?実際数えられるじゃん!」と思う名詞の代表例に「お金」があります。

お金って数えられる、気がしますよね。1円に2円、と一円玉を数えられる。
千円札も1枚2枚と数えます。

それって、紙幣や貨幣の数を数えてるんですよね。

500円玉1枚や10ドル札2枚といった場合、実際に数えられるのはそれぞれの硬貨や紙幣。
数えているのは物質であって、「お金」という概念の代用品。

お金そのものは形がなく、いろいろな種類がある抽象的概念です。
だからこそ電子取引だってできるわけですよね。


「お金」という単語は「概念」であって、決まった形のあるものではない、だから数を数えることができない不可算名詞なのです。

moneyはmoneyであって、a moneyにもmoneysにもなりえないのです。

不可算名詞の時のルール

  • a/an はつけない。(数えないから一つ、ということはない)
  • 複数形s も付けない。(数えないから、複数もない)
  • 量を表すときは、some や much などの言葉を使う。(some -いくらかの、 much -たくさんの)

不可算名詞は、数えられないものを表す名詞です。a/an や複数形s は使わず、量を表すときはsome やmuch などの言葉を使います。

「the」の意味 「わかるってるよね」のマークだった

「the」の表す意味とは

では、「the」とはなんでしょう?

「a」の説明の中で「特定ではないもの」と何度も出てきました。
逆に言うと「特定なもの」に「a」はつかないわけです。

「a」と「the」の大きな違いが、この特定性

つまり、「a」は特定ではない何か一つを指し、
特定のものには「the」がつきます。

冠詞はちょっとした目印、マークだという話をしました。
「a」はひとつ、のマーク。
では「the」は・・・

「the」は、「知ってるよね、あれのことですよ」ということを表す、指をさしているような感覚のマークです。

「I have a dog(私は犬を飼っています)」は、どの犬か特定せず「一匹飼ってるんだよ」という意味ですが、
「The dog in the garden(庭のその犬)」は「庭にいるその犬」と特定された犬を指しています。

この感覚は、「the」の由来を知るとしっくりきます。

「the」の由来

英国の著名な大学の一つ、Birmingham大学が主催する言語学会議の論文集のなかに

How definite are we about articles in English? A study of L2 learners’ English article interlanguage during a University Presessional English course クリックで別窓でPDFで読めます
(英語における冠詞はどれくらい明確か?L2学習者の英語冠詞間言語に関する研究プリセッショナル英語コース)というタイトルの資料があり

その資料の中に、

the definite article originates from the Old English demonstrative that (Old English did not have an article system

(定冠詞は古英語の指示詞である「that」に由来します、古英語には冠詞システムが存在しませんでした)

https://www.birmingham.ac.uk/documents/college-artslaw/corpus/conference-archives/2011/paper-92.pdf

という一文があります。

この論文には

英語の指示代名詞セ(se)から、現代英語の定冠詞theと指示詞thatが発達したと考えられている(p.3)。
セは性、数、格に応じて曲用されていた。このセから定冠詞þeが生まれ、指示機能から特定化(specifying)の機能を持つようになった(p.3)。
一方で、セからdeictic(指示的)機能を持つ指示詞þatも生まれた(p.3)。
したがって、セから発散(divergence)が起き、þeとþatに分かれたと考えられる(p.3)。
þe(the)からは指示機能が意味的にブリーチング(bleaching=意味の弱化)し、その結果定冠詞の機能を持つようになった(p.4)。

と、何やら日本語で要約してもうんざりなことが書いてありますが、ざっくりいうと

大昔に「se」という、(あれ)という意味の言葉があり、そこから生まれた二人の兄弟が「that」兄ちゃんと弟の「the」、ということ。

the」は「that」の弟みたいなものなんですね!

ケンブリッジ辞書で「the」の用法を調べると、ずらずらーっと並んでいて、いろんな「the」の使い方があることがわかります。

「すでに会話の中で出てきた」「出てきてはないけど、説明が付け足されることで限定されている」「お互いにどれかわかっている」「一つしかないからどれのことだかわかる」
他にもいろんな用法が紹介されています。

これを全部理解しようとするのは混乱のもと
「the」は「that」の弟ということだけ頭に入れていれば基本のイメージはOKです。

あとは応用へと徐々に理解を広げらていくだけ。

「the」は単数・複数とか関係ある?

theを使う際は、単数か複数か、数えられるものか数えられないものかを気にする必要はありません。

theは、特定の1つの物事を指す際に使用する冠詞。

例えば:

The book is on the table. (単数・数えられる)
The books are on the table. (複数・数えられる)


The air is clean today. (単数・数えられない)
The wages have increased. (複数・数えられない)

このように、theの後に来る名詞が単数か複数か、可算か不可算かに関わらず、
それが特定の1つのものを指している限り、theを使用します。

重要なのは、「その特定の物事」を指し示すか否かだけ。
数の区別は気にする必要がない点は、とてもわかりやすいですね。

「特定のもの」とは

中学校で習う「the」の定義は、進研ゼミ中学生講座のサイトによると

theはどれをさしているかわかる「特定のもの〔人〕」の前に置きます。それ以外の数えられる名詞の単数形にはa[an]をつけます。

進研ゼミ中学講座 【冠詞(a,an,the)】 a[an]かtheのどちらをつけたらよいか|中学生からの質問(英語)

中学校で習うtheの定義は
「どれを指しているのかわかる特定のもの」につく

この「どれを指しているのかわかる」という感覚が、辞書に載っている山のようなtheの用法をつかむのにとても大切になってきます。

つまり
兄ちゃんの「that」(指示代名詞)ほどしっかり指し示す機能はないけど
兄ちゃんが「that!」と指し示すことのできるものには弟の「the」がマークとしてついてくる。

そんな感じ。

「the」は、みんながよく知っているものや、そこにいる人たちと同じように分かっている
that!と言えるような特定ものを指すときにつく冠詞(マークのようなもの)。

話し手と聞き手が、同じ物やことを頭に思い浮かべられる状況、文脈、
その中で使う冠詞が「the」。

theを使うことで、みんなで「これ!」って頭の中で指さししている感覚があるのです。

例えばみんなで同じ本を読んでいたら、「本、面白かったね」と言えば、
誰もがその本のことだとわかりますよね。
「あぁ、あの本ね、面白かったよね」ってなりますよね。

その時、みんなの頭の中にうかぶ「あの本」と指さす感覚が「the」
そういう風に、「the」は特別なものを決めて指し示すマークなんです。

  1. みんなが知っている、その○○
  2. 前から話題になっている、あのおなじみの○○
  3. 場の空気からしてわかるあの特定の○○
  4. 会話の中で確定している、その○○
  5. みんなでそれとわかっているあの○○

楽器につくthe

楽器の名前の前にはtheがつきますって習いましたよね。
例えば、ピアノを “the piano”、ギターを”the guitar”と言います。

これは、みんなが知っている、世界中に存在するある特別な楽器のことを指しているからなんです。

たとえば、”I can play the piano”というと、お話を聞いている人は、みんなが知っているあのひとつの楽器・ピアノのことだと分かります。

つまり、theをつけることで、「ピアノという楽器」を特定して示しているのです。

同じように、”Let’s listen to the violin”と言えば、その言葉から一つの特別なヴァイオリンを連想できます。

楽器には種類がたくさんありますが、theをつける事で、その中からある一つの特定の楽器を指し示しているのがわかるようになるのです。

みんなが知っている存在として認識を共有できる楽器に対して、theをつけて示しています。

月や地球につくthe

The moon was full last night.”(昨夜は満月だった)
“Do you know how long it takes the earth to go around the sun?” (地球が太陽の周りを一周するのに、どれくらいかかるか知ってる?)
the moon、 the earth, the sun。月や地球や太陽のことを言うときに、多くの場合にはtheがついています。
月や地球、太陽。世界中の誰もが同じものを指していることは明らかですよね。
theをつけるのは、話し手と聞き手の両者がおなじものを認識していることを確認するためです。 「あの月」「この地球」というように、特定のひとつしか存在しない天体に対してtheが使っています。

話し手と聞き手で共有できる認識があり、それが特定できる場合に、theがついています。

ここまでの、楽器や月につくtheの感覚がつかみきれないときには、イレギュラーな使い方ですが以下で紹介する個人名につくtheをみると理解しやすいかもしれません。

固有名詞にあえてthe

基本ルールとしては、固有名詞に冠詞はつかない

のですが、あえて固有名詞に「the」をつけることがあります。
とても限定的な使い方ですが、この使い方の「the」が、theの本質を感じるのにとてもお勧めなのでご紹介します。

たとえば、マイケル・ジョーダンが彼らしいとても華麗なプレーを見せた時、
“What a move! The Michael Jordan!”
ということがあります。
マイケル・ジョーダンという名前の前に「the」
ふつうは人の名前には「the」はつきません。
でもこの「the」は

「これだ!この動きだ!これこそがわれらが知ってるマイケル・ジョーダンだ!

という気持ちでついている「the」

つまり、名前という固有名詞に「the」をつけることで、その人物の唯一性や特別さを際立たせているのです。「the」の本来の役割である「特定化」と深く結びついている使用例です。

もうひとつ、BBCドラマのSherlockのセリフから、名前に「the」がついている例をご紹介します。

Series 1, Episode 1 – ‘A Study in Pink’ (クリックでスクリプトが開きます 当該箇所はp13)

MIKE
And you couldn’t bear to be anywhere else. Not the John Watson I know!

「ほかの場所(ロンドン以外の場所)じゃ耐えられないだろう、僕の知ってるジョン・ワトソンなら」


JOHN
I’m not the John Watson

「昔の僕じゃない」

https://www.bbc.co.uk/writers/documents/sherlock-s1-ep1-a-study-in-pink-final-shooting-script.pdf
  1. MIKE が “the John Watson I know”
    と言ったのは、theを使うことで、特定のジョン・ワトソン、つまり「マイクがよく知っているワトソン」を特定してるんですね。
    theは、ジョン・ワトソンという名前の前につくことで、マイクがよく知っているワトソン像を特定しています。
  2. JOHN の返事は “I’m not the John Watson”
    言われたワトソンは、同様にtheを使うことで、マイクの言う「特定のジョン・ワトソン」のイメージ、つまり過去の自分と今の自分はもう違う、と否定しています。
    この言葉にtheがなければ、単に「自分はジョン・ワトソンではない」ということになってしまいます。

こんな風に、theを付けることで、話し手と聞き手の間で特定の人物や物事を共通認識で特定する、という働きがtheにはあります。ジョン・ワトソンという人物、マイケル・ジョーダンという人物を特定するというより、その人物の認識自体の共有を特定している、その感覚を持てば、the northやthe piano、といった初心者には理解しずらいtheも、northやpianoそのものを特定するのではなく、話し手と聞き手間で「北」や「ピアノ」についての認識や理解を共有する際に、theがその役割を果たしている、と理解する助けになりますね。

「the」のイメージをつかむための例文

「the」の指し示すイメージをつかむために、例文をみてみましょう。
自然な日本語に訳すと「その」とか「あの」とか「例の」とか「ご存じの」という言葉はついているものもあればついていないものもあります。
でも、どれも、相手が「あぁ、あれね、知ってる知ってる」とわかっている状態のものにtheがついていることをイメージして読んでください。

  1. Close the door when you leave the room.
    (部屋を出るときはドアを閉めてね。)
  2. I lost the book you gave me last week.
    (先週あなたがくれたあの本、無くしてしまいました。)
  3. Be careful with the scissors. They are very sharp.
    (そのハサミはとても鋭いので気をつけてください。)
  4. The sun was shining brightly in the sky.
    (空には太陽がまぶしく輝いていました。)
  5. We are watching the movie you recommended.
    (あなたが勧めてくれた映画を今観てるよ)
  6. The teacher asked a difficult question.
    (先生が難しい質問をしました。)
  7. I will meet you at the cafe on Maple Avenue.
    (メープル通りのカフェで会いましょう)
  8. Don’t lean on the table. It’s very old.
    (そのテーブルは古いので、よりかからないでください。)
theと指示代名詞thatの微妙な違い
  1. “The book over there is mine.”
    • この文では、冠詞 “the” が使われていますね。
      話し手と聞き手の両方がその本を認識している場合に使用されます。
      つまり、特定の本を指しており、話し手と聞き手の双方がその本がどれであるか知っている。
      “the” はその本が特定のものであることを示しています。
  2. “That book over there is mine.”
    • この文では、指示代名詞 “that” が使われています。
      話し手が指さして特定する本を示していますが、聞き手はその本を認識していない可能性もあります。
      このように、話し手が特定の物を指ししめす場合に “that” が使用され、その物が聞き手にとって未知である場合にも使われます。

a the 意味のまとめ

  • aもtheも冠詞の一つ
  • 冠詞は、名詞の前につくちょっとした目印
  • aは、「特に意味はないけどひとつだよ」のマーク
  • theは「知ってるよね、あれ」と、特定できるものにつくマーク
  • 数えられない名詞にはaはつかない
  • 数えられないものを数えるために「a cup of」などを使う

「a」と「the」の使い分け 練習問題

冠詞の練習問題を解いて理解度確認!

これまで学んだことを理解できているか確認するための練習問題を解いてみましょう。以下の英文に適切な冠詞を入れてみてください。
冠詞が必要がない問題も入っています。

  1. Can you pass me ___ salt, please?
  2. She has ___ apple every morning for breakfast.
  3. There is ___ elephant in ___ room!
  4. Cats love __ milk.
  5. I need to buy ___ new backpack for school.
  6. Do you have ___ pen I could borrow?
  7. Let’s go to ___ movies this weekend.
  8. We eat __ rice every day.
  9. There is ___ interesting article in the newspaper today.
  10. Would you like ___ cup of tea?
  11. She eats __ vegetables every day.
  12. I saw ___ UFO in ___ sky yesterday!
  13. She wants to be ___ astronaut when she grows up.

解答と解説を見るには右端の▼をクリック

1)Can you pass me the salt, please?
その塩、とってくれる?お願い)

【解説】 そこにあることがお互い認識できている「その塩」なのでthe

2)She has an apple every morning for breakfast.
(彼女は毎朝一個のリンゴを朝食で食べるんだよ)

【解説】リンゴは数えることができます。applesと複数形にはなっていないので1個だとわかります。
そして、appleがaの音で始まるので、aよりanのほうがいいでしょう

3)There is an elephant in the room!
(この部屋の中に象がいる!)

【解説】elephantがelephantsになっていないので象は一匹、しかも母音で始まるのでan elephant
どの部屋にいるのかはわかっているので、部屋を特定できるthe

4)I need to buy a new backpack for school.
(学校用に新しいバックパックを買わなくちゃ)

【解説】backpackは数えられる。複数形ではないので数は一つなのでa

5)Cats love milk. (冠詞不要)
(猫はミルクが好きだよね)

【解説】猫はミルク好き、という一般論です。
ミルクは液体、決まった形のないものなので数えません。なので冠詞をつけません。
(ネコを特定し、そのネコがすごく特別なミルクを愛している場合はどちらにもtheをつけることもあるでしょう)

6)Do you have a pen I could borrow?
(ペン借りたいんだけど持ってる?)

【解説】ペンは一本日本と数えられます。pensになっていないので、一本のペンだからa

7)Let’s go to the movies this weekend.
(週末、映画見に行こうよ)

【解説】”movies”という単数形の名詞は一般的に”映画”という媒体や娯楽全体を指します。この場合、”the movies”と冠詞theをつけることで、特定の映画館や上映作品ではなく、映画鑑賞する行為全体を指しています

  • the movies = 映画(全体としての娯楽/メディア)
  • the piano = ピアノ(楽器全般)
  • the stars = 星(天体全般)

8)We eat rice every day.(冠詞不要)
(私たちは米を毎日食べますよ)

【解説】お米は小さな一粒一粒なら数えますが、ご飯を食べます、というまとまりとしてとらえるなら不可算(数えない名詞)になります。

9)There is an interesting article in the newspaper today.
(今日の新聞に、面白い記事があるよ)

【解説】articleは、物体ではありませんが一本二本と数えられる名詞です。複数形ではないので単数。
interestingがiで始まるのでan

10)Would you like a cup of tea?
(お茶いかがですか?)

【解説】お茶を勧めるときの定番フレーズの一つです。teaは液体で数えませんのでa cup ofです。

11)She eats vegetables every day. (冠詞不要)
(彼女は毎日野菜食べるんだよ)

【解説】vegetables と複数形になっているので冠詞不要です

12)I saw a UFO in the sky yesterday!
(昨夜空にUFOいるの見たんだ!)

【解説】UFO が複数ではないのでa UFOは音としては子音の”yuで始まるのでanにはなりません。
「in the sky」の中の「the」は、一般的な空や天空という場所を指して使われています。the starsとかthe pianoとかと同じです

13)She wants to be an astronaut when she grows up.
(彼女は大きくなったら宇宙飛行士になりたいんだって)

【解説】astronautは数えられる名詞です。aの音で始まるので an

いかがだったでしょうか?

一度ですべて理解できなくても、基本のイメージさえつかんでいれば、その応用で今まで理解できなかった冠詞の使い方も納得できるようになると思います。

桃栗三年柿八年
前置詞三年冠詞八年。

気長に、基本を大切にしていれば、いつか冠詞ともお友達になれますよ。

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*この記事を書いた人*
JUJU〈寿崎〉 加純

大人のやり直し英語講師

・企業様のTOEIC講習委託講師

・福岡県職業訓練TOEIC講習委託講師

・個人の生徒様のやり直し英語・TOEIC・英検・高校受験大学受験

オンラインで、個人指導・少人数グループ指導に対応しています。
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